ネコ小脳論文に関するコメント

本日付で、オンライン版に掲載されました。関係者の皆様、ありがとうございました。

雑誌のImpact Factorは1.081と、いわゆる医学系の雑誌と比較して低く、論文の内容そのものも神経科学的に新しい知見を加えるわけではないですが、私としてはこの論文はとても大切です。なぜなら、

  1. おそらく神経科学の研究論文としては初めて、本物のHPCの専門誌に掲載されたから
  2. 本物のHPCの専門家とのコラボレーションにより初めて可能になった研究論文だから

です。

1. については、これまでも「京」全ノードを使ったシミュレーションの論文(Kunkel et al. 2014)や、我々のリアルタイム小脳モデルの論文(Yamazaki, Igarashi 2013)等ありましたが、掲載誌はFrontiers in NeuroinformaticsやNeural Networks等の、いわゆる神経科学の専門誌でした。もちろん神経科学としてのインパクトの方を重視したのだと思いますが、一方で、ではいわゆるHPCの専門誌に掲載可能な専門性と強度を持っていたかというと、必ずしもそうではないように思います。我々の今回の論文は、神経科学の多くの人達が聞いたこともないような、スケーリング、キャッシュ階層、通信の隠蔽、並列リダクション、とHPCの言葉を使って書かれたものであり、専門誌に掲載される程度の強度を有しています。分野を超えた論文を書けたことは、私にとって大きな意味があります。

2. については、戎崎先生、牧野先生というGRAPE Projectの2大巨頭と一緒に論文を書く、という栄誉に恵まれました。「異分野融合は大切です」とお題目のように唱える研究者は大勢いますが、実際にそれを実現するのは非常に非常に困難です。まずお互いが同じ言葉を話せるようになるまでにとてつもない時間と労力が必要だからです。大変ありがたいことに、2大巨頭の先生は我々の分野に歩み寄って下さり、共著者の五十嵐さんと私はより一層HPCの研鑽を深めた結果、少しは同じ言葉で話ができるようになりました。そもそも私が菖蒲を使えるようになったのは、戎崎先生が主催するアクセラレータ研究会がきっかけですので、この研究会が存在しなければ、そしてこの研究会に五十嵐さんが私を紹介してくれなければ、今回の論文はありませんでした。チームの勝利です。

これまでの私のキャリアにおけるマイルストーンはYamazaki et al. (2015)で、これを越えるのは当分ないだろうと思っていましたが、今回の論文は新たなマイルストーンです。2015年の初夏に初めて睡蓮を使い始めたときに、こんなに早くこの特別なスパコンの論文を発表する日が来るとは思いませんでした。

次のマイルストーンは、2018年春、1,000億ニューロンからなる世界で初めてのヒトスケール小脳モデルのリアルタイムシミュレーションを実現することです。どうぞお楽しみに。

山﨑 匡

新メンバー

4月から、特任研究員の山浦洋さん、B4の吉村英幸さんがjoinしました。よろしくお願いします!

受賞報告

片倉さんが学生表彰、市村さんが目黒会賞をそれぞれ受賞しました!

卒論・修論発表会

無事終了しました。

2/3 修論発表会
片倉央揮 時間経過表現のための大脳基底核-小脳連携モデルの実装
市村大輔 ヒト筋骨格系モデルによる二足歩行パラメータの獲得手法の開発

2/9 卒論発表会
古荘航 ネコスケール人工小脳におけるシナプス可塑性の実装

ポスト「京」ポスドク募集のお知らせ

[2017年3月1日] 募集は終了しました。

これまで水面下で個人的に連絡を取ったり知り合いのつてを辿ったりしていましたが、公募することにしました。このページを見に来ていただいてありがとうございます。

ポスト「京」萌芽的課題4「思考を実現する神経回路機構の解明と人工知能への応用」の「脳のビッグデータ解析、全脳シミュレーションと脳型人工知能アーキテクチャ」 (研究代表: 銅谷賢治先生)

というプロジェクトに参加しています。私の担当は言うまでもなく小脳ですが、特にこのプロジェクトでは、別のグループが構築している大脳モデルと我々の小脳モデルを繋ぐ大脳小脳連関を、「京」ならびにポスト「京」で実現することを目標としています。

プロジェクトは2020年3月まで3年間です。職場は電通大 (東京都調布市)で、電通大の特任研究員になります。給与は大学の規定に従いますが、計画書の書類上は700万円計上してあります。エフォートは要相談。こういうことを書いていいのかどうか非常に不明ですが、博士号を取ったけど職が見つからなかったので当座のつなぎ、でもまあいいんじゃないかと思います。

仕事の内容は大脳小脳連関なので、ざっくり

  1. 大脳と小脳がどのようにして結合しているのか、大量の論文をサーベイして実装可能な青写真を作る。
  2. その青写真にもとづいて、実際に実装する。

に分けられるかなと思います。両方できれば最高ですが、サーベイができるならその青写真に従って私が実装しますし、実装ができるならサーベイは私が。役割分担しましょう。

そんなにピュアな神経科学は狙っていません。プロジェクトの半分は神経科学ですが、もう半分はAIの人達で構成されていますし、新学術の「脳科学とAI」と一緒にやっていますので、まあ、本物の神経科学をベースにした全脳アーキテクチャ研究、くらいに捉えていただいてもいいかと。

興味がありましたら、とりあえずご連絡下さい。連絡先は、

search17@numericalbrain.org

です。現時点では履歴書や推薦書は不要です(もちろん送って下さってもかまいません。確認後こちらで責任を持って破棄しますし、目的外の利用はしないことをお約束します)。あなたのウェブサイトのURL、ResearchGate, Google Scholar, Twitter, GitHubのアカウントなど、あなたのことがわかるものなら何でも教えて下さい。拝見します。

よろしくお願い致します。

山﨑 匡

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