ゆく年度くる年度2022

2022年度もあと数時間で終わろうとしているため、他にやることがある(情報工学工房の初回ガイダンスの準備のお願い・スプリングスクールの報告書作成・外部資金の申請書作成)のは分かっていながらも、これを先に書き上げてしまいたいと思います。

2022年度は、「富岳」成果創出加速プログラムの最終年度ということで、まず様々な講演・アウトリーチを頑張りました。中でも6月のNEURO2022で行った教育講演は、朝早くにもかかわらず非常に多くの方にご覧いただき、本当に感謝しております。この講演をきっかけにして実験の方と共同研究も始まったところです。また研究成果としては、ついに「富岳」の脳モデルと研究室の身体モデルを相互に接続して同期を取りながら動かすことができるようになり、論文執筆の準備を始めました。大学院生の國吉さん(M1)を筆頭著者にして、国際共著論文になる予定です。

研究関連では、科研費学変A「行動変容生物学」の計画班の分担として、参加させていただくことになりました。マウス脳身体モデルに階層強化学習を加えて、随意運動の学習過程のシミュレーションをします。特に、内部報酬に対応する複雑スパイクの時空間パターンの変化に興味があり、成果創出加速プログラムと連携して進めています。大学院生の栗山さん(D1)が小脳の強化学習モデルの実装に取り組んでいます。

さらに、大学院生の田村さん(D1)は最初の査読付研究論文を出版することができました。昨年度卒業した小林さん(現山口大助教)が開発したマルチコンパートメントのプルキンエ細胞モデルにおける、樹状突起計算の能力を調べたものです。これを持っていよいよ本格的にミクロスコピックなニューロンモデルのシミュレーションを行うようになり、今はAllen Cell-Type Databaseの大脳皮質ニューロンのシミュレーションを実装中です。

このように、2022年度は博士課程の学生が2名になりました。トレーニングに力が入る一方で、下の学生達の研究をリードしてくれるので、とても助かっています。感謝。

12月には山口大に助教として就任した小林さんを表敬訪問するのにかこつけて、小林さんのボスである西井先生の研究室と、山口大で合同セミナーを開催しました。山﨑研は殺伐を旨としているのでこれまでそのようなイベントは一切開催してこなかったのですが、実際やってみたら結構いいものだなと思いました。特に年末に開催したことで、それに合わせて研究成果が出て、その後の卒論・修論が捗った感じがします。小林さんとも引き続き共同研究をおこなっています。卒論といえば、志賀さん(B4)は4月から京大の石井研の大学院生になります。入試に合格して本当に良かった。ご活躍を願っています。

あとは久しぶりにSfNに行ったらホテル代がコロナ前の2倍になっていたとか、教科書は増刷がかかったとか、内藤の助成金をいただけたとか、ついに神経回路学会のウェブサイトをリニューアルできたとか、単発でのイベントも多数ありました。今Basecampをみたら捌いたTo-dosは150件強ありました。Basecampがないともはや仕事が回らない。

そして最後に、昨年度延期した10周年イベントをついに開催することができました。10年前の卒業生もちゃんと来てくれて、殺伐を旨としているけれどもこういう時はちゃんと集まってくれる、良い人達に恵まれました。会場を貸してくれた代々木上原のセララバアドさんにも大きな感謝を。いつも無理言ってすみません。次は20周年記念イベントです。

2023年度は、まず卒研生が過去最大の5人来るので戦々恐々としているのと、國吉さんと栗山さんがそれぞれ論文を書いてくれるのと(多分)、教科書の次の展開と、研究室としての方向性の収斂が、現時点での大きな検討事項です。特に、メゾスコピックレベルのスパイキングネットワークのシミュレーション研究は、LIFの全脳身体モデル+階層強化学習+富岳という一定の達成を見たので、これはメインストリームとして今後も進めていきますが、ミクロスコピックレベルのマルチコンパートメントのシミュレーション研究をサブストリームとして、「脳デジタルツイン」の研究を立ち上げようと考えています。ミクロコネクトームとカルシウムイメージングをデータ同化して、特定の一個体の脳の構造と活動を忠実に再構成する研究です。既に取り掛かっているので、年度末には何かの報告ができるかもしれません。

そういうわけで、来年度も楽しみです。共同研究のお誘いと大学院生の研究室配属は常にオープンですので、いつでもご連絡ください。