Basecamp 3への移行

まとめ

研究室の運営をBasecamp 3でやることにしました。

背景

2012年度にこじんまりと始まった山﨑研は、今や人も予算も何倍もの規模に膨れ上がっています。これまではメーリングリストだけで研究室のあらゆる運営業務を行ってきましたが、今や月平均100通に達する勢いです。それプラス、大学や国プロやあらゆるところから全ての連絡がメールで来るので、もう限界です。メールは基本的に原始的なツールであり、時代にそぐわないと感じています。

例えば1:
事務連絡。「これお願いします」「ここはどうしますか」「こうしましょう」「了解です」直接話せば10秒だけどメールだと2往復。メールだと作業中に割り込まれないという利点があることは理解した上で、でももっと簡単にできるだろうと思う。ああ「電話しろ」は無しね。電話するくらいなら直接話に行くわ。

例えば2:
検索。大量のメールが来るので今や検索は必須で、それはgmailが最強だと思うけど、プライベートのメールならともかく大学のメールを転送するのは怖い。学生の個人情報とかセンシティブなやついっぱいあるし。でもそれ以外のMUAは検索が弱すぎ。まあでも難しいと思う。text/plainでcharset=iso-2022-jpな時代ならともかく今はtext/htmlでも来るし、utf-8でbase64 encodingされてたりするし。2年くらい notmuch + emacs を試していて、割と良いけどでも日本語の検索はパーフェクトではない。あとOutlook、おめーはいつまで環境依存文字をiso-2022-jpで送り続けるつもりだ?

例えば3:
書類作成。送られてきた添付ファイルを保存して修正して添付して送信して修正されたのが戻ってきてまた保存して修正して添付して送信して、という具合にファイルをピンポンするのはとってもだるい。バージョン管理もできないから、ファイル名に-ver1, -ver2, … みたなsuffixがついていく。

例えば4:
添付ファイル。ちゃんとダウンロードしてフォルダに整頓すればいいんだろうけど、国プロやってるとたくさんの添付ファイルが五月雨式に来て、都度整頓する気がなくなる。MUAから添付ファイル内の検索もできない。

例えば5:
同じく添付ファイル。メールスプールのquotaのせいで、巨大なファイルは添付できない。なので、基本的にDropboxと併用せざるをえないけど、ツールとして統合されてないためこれはこれで手順が煩雑。あとDropboxの無料プランは2GBしかないので、簡単に一杯になってしまう。

例えば6:
そういえば、メールに返信するときにもとの文面を丸ごとお尻につける習慣っていつのまにか定着したけど、あれのせいでメールのファイルサイズが際限なく大きくなっていく。検索にもマッチしてしまうから邪魔。text/plainとtext/htmlが両方ついてるさらに倍。

そこで、メーリングリストに替わるツールを探し始めました。Slackはポピュラーですが、チャットはせわしなく、ずっと束縛されている感じがするのと、無料プランでは検索が2ヶ月前まで、有料プランはユーザ1人毎の課金なのが使いにくいと思いました。アドレナリンがいつも出まくっていて四六時中繋がっていることを要求されるベンチャー企業ならいいかもしれませんが、我々はもっと静かにやりたい。実際、ある演習の授業の打ち合わせはSlackだったけど、メールよりずっと便利か?というとそこまでの優位性を感じなかった。Trelloも良さそうですが、やっぱりユーザ1人毎の課金は使いにくいのと、他サービス連携が可能だけどそれを自分でやらないといけないのが面倒です。連携させたいサービス毎にアカウント取らないといけないし、それぞれがまた有料だったりするし。また、メールの大事な機能はファイルが添付できることで、ある意味でメーリングリストは「整頓はされないけど少なくともそこに全部ある」というレベルで研究室のストレージとして機能していたのですが、SlackやTrelloはそういう使い方を想定していない。ファイル添付はできるけど。

私はRubyユーザで、Ruby on Railsを作ったDHHのファンでもあり、彼の著作を通して彼の会社がプロジェクト運営ツールを作っているのは知っていました。Basecampというこのツールは有料ですが、チャットもワープロもストレージもTODOリストもリマインダーもカレンダーも全部あって、統合されています。上記の問題は全てきれいに解決するし、年間で定額だし、今のうちの予算規模なら十分支払える額なので、試してみることにしました。30日間は無料で試用できます。

使い方

30日間使ってみて、以下の利用法に落ち着きました。

HQは使わない。メンバーは私だけにして、非表示にする。研究室は毎年メンバーが入れ替わるので、HQではなくTeamがより適切。

Teamは3つ。
  1. 研究室全員。研究室ワイドな連絡に使う。毎年度末にアーカイブして保存し、次の年度のものを新しく作る。
  2. 資料置場。全員がアクセス可能な永続的な資料を置く。例えば歴代の卒論修論、論文やポスター等の研究成果、研究用の情報、あらゆるメモ、等。年間プランなら1TB使えるから、シミュレーションの生データとかを置かなければほぼ無限に使える。
  3. 事務部門。私とスタッフのみ。あらゆる事務連絡に使う。
Teamは細分化しない。

逆にProjectはたくさん作って細分化する。参加する国際会議、国プロ、執筆中の論文、等、案件毎に作って関係者だけで構成する。全員で共有する必要の無い情報だけに使う。個別の案件だけど全員で共有した方がいい情報 (例えば論文が採択された) は、Teamの方に流す。

Teamの各Toolは以下のように使う。

研究室全員
Campfire: 短いメッセージの交換
Message Board: 全員へのアナウンス
To-dos: 締切
Schedule: 卒論修論、学会等のスケジュール
Docs & Files: ファイル置場と文章の共同編集
Automatic Check-in: 毎週1回、先週の進捗と来週の予定を書く
Email Forwards: 大学等から来る共有すべきメールを転送

資料置場
Message Board: 情報メモ
Docs & Files: 論文PDFや研究資料、画像や動画も

事務部門
Campfire: あらゆるやりとり
To-dos: 書類の締切
Schedule: 出張や会議等のスケジュール
Docs & FIles: 申請書や報告書、必要な書類や写真の全て
Email Forwards: 大学事務や国プロから来るメールを共有

このように、Team毎に使うToolは少しずつ違っている。

一方、Projectの各Toolは以下のように使う。

Campfire: 短いメッセージの交換
Message Board: まとまった分量のある文章を渡す、あるいは共同編集する
To-dos: タスクの締切を設定するとき
Schedule: 発表スケジュール等
Docs & Files: 作業中のファイル
Email Forwards: Project関係の外部から来るメールを共有

ProjectによってはMessage BoardがなかったりScheduleがなかったりするが、基本は同じ。

あとは、自分だけが使うプライベートなTeamとかProjectを好きなだけ作る。

これで、かなりうまく回ってる感じがします。自分が関係する項目が更新されると通知が来るので常に張り付いて無くていい、短いメッセージを送るのがメールに比べて簡単、スケジュール管理もそれなり、ファイルをまとめて置いておける、文書作成が共同でできる、自分や誰かに関するタスクをまとめて表示できる、メールを転送して添付ファイルを保存したりコメントをつけられる、等、いろんなものが統合されているおかげで使いやすいです。メッセージとヘルプは全部英語ですが、UTF-8なので日本語は通ります。検索もかけられます。凝ったことはできないかわりに、使い方はとてもシンプルで、学習曲線がなだらかなのもいいです。クラウドベースですが、応答は十分速いので、リモートワークでもいい感じです。

Basecampを使わない場面

ただし、全てをBasecampでやるわけではありません。

卒業生への連絡はメーリングリストです。一方的にアナウンスするだけだし、ウェブにログインしたりアプリをインストールするまでもないので。

研究室外へのアナウンスはウェブとTwitterです。これはまあ当然。

研究室外の人と一緒にやるプロジェクトはメールです。Projectに招待してもいいけど、やっぱりウェブへのログインやアプリのインストールをお願いするのは大変と思うので。

記録に残すまでもない/残したくない意見表明や悩み相談は毎週のセミナーで。全員集合するので、全員から直接(おそらくは穏当な)コメントがもらえます。Basecampは直接コミュニケーションを取れない/取ると生産性を損ねる場合に限って使うべきもので、基本は直接話す方が良いと思います。

一般的な雑談は研究室で。記録に残すまでもないし、雑談はコミュニケーションの発露なので、研究室に来てするのが一番いい。チャットで雑談を始めると繋がれっぱなしになるのも問題。

目黒会賞

古荘さん (M2) が目黒会賞を受賞しました!おめでとうございます!

ゆく年くる年2018

今年もこの時期になりました。今年は齊藤さん関連のニュースで慌ただしく始まって、最後の最後に巨星墜つ。今投稿中の論文、伊藤先生に読んでもらいたかったなぁ…。

今年は研究室内でも様々な人の動きがありました。

  • 初めて学外からの大学院生受入れ (4月・砂川さん)
  • 片倉さん渡英&博士課程進学 (7月・U Hertfordshire, England)
  • 倉重さん栄転 (11月・東海大テニュアトラック講師)

砂川さんは推薦で入学を許可された優秀な学生で、本学の学生とは違うカラーを持っており、研究室の多様性を広げてくれています。誰よりも行動し、研究室に縛られず学外の勉強会やインターンに積極的に参加して、研究室に新しい風を吹き込んでいます。ありがとうございます。片倉さんは卒研生としてうちに来てから一貫して海外志向であり、紆余曲折ありながらも今年ついに夢を叶えました。新たな研究ステージを応援します。倉重さんは当初からうちのNEDOプロの実質的な推進者として頑張って下さいました。大脳皮質のモデルはヒト運動データ取得からGANsの構築まで、多才な彼のおかげで着実に完成に向かっています。アカデミックポジションが少ない昨今、見事な快挙であり、新たな船出を祝福します。

学生受入れに関して言うと、来年度は学外から2名、大学院生が来ます。うち1人は博士課程からの入学です。来年度メンバーは学生8名+大人組となる予定で、研究室の規模が少しずつ大きくなってきて、しかも学生のレベルは上がり続けているので(GPA平均3です。自慢です)、ありがたい限りです。

また、今年は初めて講義を担当しました。前期は「大学院技術英語(他3名の先生と折半)」、後期は「数値計算」と「シミュレーション理工学特論(龍野先生と半分ずつ)」を担当しています。実験科目では「情報数理工学実験第二」を担当しています。特に「数値計算」は2年生の科目と言うこともあり、毎回きっちり2日かけて準備をして臨んでいます。毎回授業終わりにアンケートを取って全部のコメントに回答したり、授業中に質問を匿名で受け付けてライブで回答するための仕組みを導入したりと、学生の声をリアルタイムに拾い上げる様々な試みをおこない、おおむね好評です。講義を独りよがりにしないためには受講生の声を聞くのが一番いいのですが、大きな教室で学生が90人もいると、さすがにそんな雰囲気にはなりません。でも昔と違って今は色んなツールがあるから、テクノロジーを駆使して、より良く、双方向的で、学生がattentiveな講義にしていきたいと思います。

研究に関しては、今年からAMEDのプロジェクトに参加することになりました。これは博士課程の市村さんが中心になって動いて取ってきた外部資金であり、彼の業績の一部とすべきものです。NEDOプロもポスト「京」もヘテロも科研もそれぞれ着々と進行中です。特にポスト「京」は山浦さんが頑張って「京」全ノードを使ってヒトスケール小脳のシミュレーションに成功し、論文にまとめています。NEDOプロとポスト「京」は来年度が最後なので、最後まで粘って良い成果を上げるとともに、次に繋がるような展開を考えていきたいと思います。

私個人の研究は、今はとにかく投稿中の論文をなんとかするのが最優先です。Marrが最初に小脳のモデルを提唱してから来年でちょうど50年。これまでの小脳研究の枠組みそのものを見直す時期に来ていると思うので。研究以外の活動では、理研の五十嵐さんと一緒にやらせてもらってきた高性能神経計算の1つのマイルストーンとして、我々は教科書の執筆を始めました。冬休み中にはなんとか初稿を上げたいと思います。

来年の目標:

  1. 市村さんを無事卒業させる (来年D3になるので)
  2. 授業をブラッシュアップする
  3. NEDOプロとポスト「京」を無事終了させる
  4. 次の国プロを始める
  5. 論文をたくさん通す
  6. 本を出版する
  7. 来年こそ1PF欲しい

来年も盛りだくさんでお送りします。どう考えても盛りだくさんにならざるを得ない。

2018年12月30日
山﨑 匡

倉重さん栄転

特任研究員の倉重さんが11月から東海大学のテニュアトラック講師に栄転しました!おめでとうございます!倉重さんは引き続き客員研究員として、NEDOプロジェクトを続けます。

海外留学

2016年度に修士課程を修了した片倉央揮さんが、10月からイギリスのUniversity of Hertfordshireの博士課程に進学しました。

2018年度第1回オープンキャンパス

7/16 (日) に開催されました。研究室公開を行い、85名+αの大勢の方が見学に来られました。どうもありがとうございました。

新メンバー

吉村さん (M1) が大学院に進学し、砂川さん (M1) と 古荘(克)さん (B4) が新しくjoinしました!ようこそ!

卒業式

露木さん(M2)と吉村さん(B4)が卒業しました。おめでとうございます!

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