ゆく年度くる年度2020

2020年初頭から始まった世界的な非常事態によって、あらゆる事が変更を強いられた結果、対応していくだけで精一杯でした。毎年恒例の年末のゆく年くる年はついに書けず、今回は年度末での総括です。

2020年度はとにかく我慢を強いられた年度でした。大学が閉鎖され、学会発表はおろか外出そのものが不可能になり、在宅勤務を続ける日々でした。事態は未だに好転しておらず、この状況がいつ解消するのかも未知ですが、解消した日に備えて今できることをやっておく、という態度で臨むのがよろしかろうと考えています。皆さんと皆さんの大切な人々が健やかにお過ごしになられることを願っています。

さて、今年度は早々に、電通大の遠隔授業をサポートする「遠隔授業WG」のメンバーに任命されました。私はZoom担当で、初めてZoomを使う先生方のために資料を作ったり、全学のオンライン説明会で紹介したり、遠隔授業に関する質問を一手に引き受けるワンストップ窓口で質問を捌いたりしていました。WGは開始早々3週間でメールが800通とかとんでもないことになっていて、Basecamp 3派としては遠隔授業よりもまずインフラの整備だよなと思った記憶があります。それもあってワンストップ窓口はBasecamp 3を使うことを主張し、To-Doリストを駆使して非常に効率良く捌くことができました。あれがメーリングリストだったらぞっとします。その活動によって遠隔授業WGは今年度の優秀教員賞 (団体部門) を受賞しました。おめでとうございます/ありがとうございます。当初の想定ではWGは半期で終了だと高をくくっていましたが、結局1年続き、さらにもう1年は続きそうな予感です。

また2020年度は、棚卸しの一年でもありました。

まず、実施してきた複数の国プロが全て終了しました。そのため報告書の作成や備品の片付けに多くの時間を費やしました。プロジェクト用に借りていた部屋も返却し、引っ越し作業を行い、ついでに忙しさにかまけてほったらかしにしてきた居室の整理も実施しました。

関連して、国プロでの成果の総括として論文を3本出版しました。在宅勤務期間中にできることと言えば執筆活動くらいなので、いい機会と腹をくくってコツコツと書きました。1本は大規模神経回路シミュレーションの解説論文で、Neuroscience誌に掲載されています。神経回路シミュレーションは現在進行形の研究分野であり、様々なことが非常に速く動いているので、包括的に書き上げることがなかなか難しく、ちょっと忸怩たる思いがあります。もう1本は2018年末の藤原セミナーの講演をまとめた書籍の1章で、1070年前後に提唱されたMarr-Albus-Itoモデルがその後の50年間でどのように変遷したのかを進化系統樹のようにまとめた解説論文です。この論文の執筆は自分が知っている理論の論文を全て書き出して整理整頓する作業で、非常に楽しかった思い出があります。最後の1本は修士の学生の論文で、Pavia大学のEgidio D’Angeloグループとのコラボレーションの成果です。

そして、書き物くらいしかできなかったこの一年間を、停滞していた教科書の執筆に費やしました。3月4日についに原稿を書ききり、編集者の方に渡したばかりです。来年度は編集作業をし、年度内に出版できることを夢想しています。

そして棚卸しをする一方で、国プロで手持ちのネタをすべて使い尽くしてしまったので、対外発表ができない状況を逆手に取って、新しいネタの仕込みを行いました。階層型深層強化学習、ROS、マルチコンパートメントモデルをこれからの中心的なテーマにしていきます。

以上まとめると、我々は今年度一年かけて、これまでやってきたことを一度仕切り直しました。来年度は最初からトップスピードであらゆる活動を行っていきます。

来年度は、まず博士課程の学生を卒業させるという大仕事が待っています。昨日論文を投稿したところで、スムーズに採択されて学位論文の執筆に取りかかれることを願っています。学生数はついに10人の大台に乗ります。新しい研究費も獲得していかなければいけません。「富岳」成果創出加速プログラムは、過去4日間の徹夜によって前人未踏の成果を達成したところです。近いうちに公表できることを楽しみにしています。