来年度以降の研究テーマについて

山﨑研ではこれまで「脳身体シミュレーション」と「脳デジタルツイン」の2つのテーマを走らせてきました。SC’25での発表が終わって、Neuliteもリリースできたので、これからはNeuliteの開発を続けるとともに、チュートリアルやハンズオンなどの普及啓蒙活動にも力を入れていきたいと考えています。試してみたいアイデアや実装してみたい技術がたくさんあります。Allen Instituteとの共同研究も継続しますし、生物学的詳細シミュレーションのコラボレーションはいつでも歓迎です。「富岳NEXT」の登場を楽しみにしています。脳のデジタルツインを作れる未来を目指します。

一方、「脳身体シミュレーション」の方は、ずっと「階層強化学習+筋骨格モデル」でやってきましたが、今年ようやく小脳強化学習のスパイキングネットワークの論文が出たので、結構ゴールが見えてきたと感じています。理屈の上ではあと全部繋いで動かすだけですし、来年度から博士課程の学生さんが1人外部から来るので、その人が最終的にまとめて本人の成果にしてくれると思います。

小脳強化学習の論文が出たことによって、小脳単体の研究は結構やり尽くしたような気分になっています。タイミング学習とLiquid State Machineの論文から出発して、Marr-Albus-Itoモデルを拡張する仕事をしてきましたが、ずっと難問だった「教師信号はどうやってできるのか?」という問題に対して、「教師信号でなくても学習できるからOK」と回答できるようになり、自分の中ではかなり満足しています。と同時に、これ以上のアイデアはしばらく出なさそうです。

話がどこにむかっているかというと、研究室の方向性として、いわゆる計算論的神経科学の研究はトーンダウンして、Neuliteと生物学的詳細シミュレーションにリソースを集中させようと考えています。脳の情報処理メカニズムの解明には常に興味がありますが、継続中/申請中のものを除いて、そういう研究はしばらく控えます。大学院でうちへの配属を検討する他大学の学生さんは注意してください。

計算論的神経科学の研究室は国内にいくつもありますし、うちが強かった小脳の理論研究は一旦引くので、この種の研究をするためにうちに来るメリットはないです。さらに言うと、脳身体シミュレーションで使ってる点モデルに関するノウハウは黒本に全部書きましたから、うちに来なくてもどこでも学ぶことが可能です。

「自分たちにしかできない研究をする」というのが、研究室の健全なあり方だと考えます。神経科学の土俵でHPCをやるグループから、HPCの土俵で神経科学をやるグループに進化すべく、研究の文脈を変えますので、そういう研究に興味のある人は是非うちへ。

山﨑 匡